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第八部 百五十二頁
ハティ 2019/06/01(Sat) 10:04 No.280
六月一日
季節の変わり目の到来と相成り、潮風にも少し潤いを感じ始めてきました。
基より海辺にあるこの町ではそれほど乾燥を気にする必要性もなく、むしろ
その地特有の害というものも決して小さくはないのですがそれでも、気の緩みが
どんな災害になるとも限らないものですから業務においては気を引き締めて参る
所存です。
さて、本日特筆すべき事柄について思い当たることといえば、私自身にも覚えの
あることではあるのですが、新たにこの業務に入られた方が住民の皆様と接する際に
謂れのない事柄を指摘されて心を痛めたり、慣れぬ環境に体調を崩されて
身持ちまで崩し意図せず連携を阻害したりこの季節特有の障害に際し、相談を受ける
事が度々あります。
人の機嫌というものは知らぬ間に伝染してしまう事を我々は承知している故に
これはこれで一事と無視することなく住民の方々、隊員の方々双方に安心できる
環境を柔軟に対応する為に一段と笑顔で接するようにしなければなりません。
人の心とはその淵がどうであろうとも、これが業務の一環であることに変わり
なければこそ。初心を過ぎた身であろうと、貫徹することの大切さを伝え、
この苦難に立ち向かうことが延いては治安の維持に貢献していると信じております。
第七部 三百三十三頁
ハティ 2018/11/29(Thu) 08:23 No.276
十一月二十九日
夜の訪れが大分早くなってまいりました。それと共に冷え込みも厳しくなり体調管理には
慎重が求められます。
ある種節目にあたるこの日ですが、特に騒動なく平和に過ごせていく幸を堪能出来ることに
喜びを感じてなりません。
そんな中、業務に携わる中で不意に気付いたことがあります。
窮する者への施しを旨とする本隊における活動は日を跨ぐものではありますが、
それがどんな些事に見えようと隊として動く事への負担は見た目以上に大きなもので
あまり動かぬ筈のこの部隊であろうと体力が要求されるものです。
ただ、その忙しなさで流されていくだけの者とそうでないものの違いは明確で、
それは業務への慣れとか体力の大小よりも、柔軟な思考で適材適所に応じる対応の
速さこそが危難に生じた者への最善の施しであることを忘れぬ揺れない心で常に接する事が
出来て、かつ、それが皆に幸を分け与える事を理解できるか否かにあります。
それは若輩の私であればこそ真っ先に知るべき事なのでしょうが、お恥ずかしながら
十全な理解に及んでいないのだろうと今の季節に巡ってこそ、改めて思い知る事でも
ありました。
知らず知らずに指示に従って無心に動いているだけでは体力は身につけど、
地力の理解には及びません。
寒くなるこの季節にこそ、身を引き締めてより貢献に及ぶよう余力をもって取り組むように
しなければなりません。
第七部 百七十九頁
ハティ 2018/06/28(Thu) 11:23 No.272
六月二十八日
月日の経つのは早いもので、次の月で今年も半分に差し掛かる事になります。
今年も日差しが刺すような厳しい季節にも拘わらず、行商を行っている叔父様から、
我が家に新たな薬草を仕入れていただきました。施設内では植生の確保も限られては
おりますが、上手く日差しを届かせるように工夫しつつ、横四方だけでなく、
縦の区域も使って植えたりもしておりますので手入れも割と重労働になりつつ
ありますが、それでも薬草の確保が充実しているのは施設としても大きい事で、
お陰様で多くの人々の治療にも貢献できるようになりました。
我が隊にも必要に応じて支給の伝を貰える事、また、他部隊にもいざという時に
効能を示す薬草の特徴を伝えて応急処置に役立てたり、常時保存食等に用いる成分も
応用次第で止血や鎮痛等役に立つ生理作用をもたらすものが存在する事、
それが草原の至る所に生息している事、我々の立場であっても植生の制限の克服に
それを用いる事も加えて伝える事で部隊活動の安定性を増す働きに貢献できることを
改めて伝え、街の平和の為に尽力出来るようにせねばなりません。
危難は待ち伏せて狙えるものではないのですから。
第七部 百十二頁
ハティ 2018/04/22(Sun) 11:45 No.269
四月二十二日
すっかり風も穏やかで温かく過ごしやすくなってまいりました。
木々にも新たな緑が生い茂り、植生に色が巡り色濃く映える事に季節を
感じてなりません。何度も書いたことですが、何時でもこの季節の訪れは
喜ばしい事だと感じてなりません。
さて、私の業務とは別に我が家の施設内にて設営している診療所にて
最近、お手伝いさんの身内の方が知り合いの伝でオルガニアとは別の地にて
農場の施工が終了したとの報を受けて大規模な移転の準備をしているとのことで
我が家からも移動の手段の提供をすることになりました。
我々もそのための準備をすることになったのですが、身内の好でやった事にも
関わらず先ほど彼らがオルガニア内で持っていた敷地の一部を対価として
寄付したいという有り難いお申し出を受けました。
その交渉を仲介して貰えないかと私まで話を通して頂いた次第です。
私がこういう形でお役に立てるというのは光栄で有ると共に、本来の
治安部隊の役割はこういう形で、土地間の所有権の在り方を見据える第三者が
存在するからこそ街の平穏に貢献する事を改めて心せねばなりません。
残念ながら、この街は流入流出の激しい土地故にどの土地が何方のという
状況の把握は仔細に追うのはどうあっても難しいのが現状で、これは改善の
余地は多々存在しますものと存じております。
しかしながら、無いものを強請るよりは眼前の状況を一つ一つ見据える事が
最も大事な事なのだと少しでも体験を通して身に染みるようになって良ければ
良いのではと思います。
第七部 一頁
ハティ 2018/01/01(Mon) 22:11 No.265
一月一日
この場を借りまして新春のおよろこびを申し上げます。
旧年は大変沢山の方にお世話になりながら迎えた一年のように思えます。
お陰様で、私も公務に携わり三年目の節目を前に齢十六を迎える事が出来、
新たに向かい入れたこの日記帳と共に新たなページを共にしていく所存です。
思えば、この時期に親族を迎い入れての祝賀に備えて準備に余念が無かった
当時を思うと、逆に施しを受ける立場に転じているこの状況に未だに慣れておらず
私如きが黙して宴に興じる事を良しとは出来ぬ微妙な立ち位置にあります。
公務に戻った際に何か手伝う事がないか、思わず聞いて回った事が逆に皆様の
足を引っ張る羽目になったことも記憶に新しい所です。
その時は、既に勤めを持つ者としての自覚を覚えるべきだと言われたのですが、
まだまだ胸を張って引き受ける程に自己を肥大できずに違和感を生じたままで居る事も、
私の正直な気持ちですし、今後とも暫くはそのような状態が続くのだと予想できます。
右往左往と、不安に駆られている様は情けない事は重々承知しているのですが
個人的には次善の策を練っておく必要なある出来事だと旧年の最後の反省点として
こちらに特筆すべきだと思いました次第です。
当然の話ですが、この祝賀の雰囲気は町全体に浸透している事を鑑みて、
祝いの際に突発的な事案が発生することも予測できますので、引き続き警戒を
怠らぬようにこれはこれと気を引き締めて粛々と勤めを果たしていくつもりです。
第六部 三百五十六頁
ハティ 2017/12/23(Sat) 14:43 No.264
十二月二十ニ日
冬の到来は肩の強張りから始まるとはよく言ったものではございますが、
本日は正に寒さが身に染み入る風の絶えない寒い日でした。
そればかりではなく、冬の季節に入りこの時期になると日の照る時期も
短くなり、夜の長い状態がしばらく続きまして日の入りが待ち遠しくなります。
そんな時期だからこそ、外では木々に装飾を施し闇に負けぬほどの明るい
雰囲気を流すのが大事になってきます。今がまさにその時です。
我が家ではあんなに山のように積み上げていた薪の減りも早く、仮にも
施設を持つ身としてその維持には欠かせない為に燃料の節約が課題と
なっております。
そこで、湯浴みの際は地熱施設に赴くことになるのですがそこへ行くまでの
足にも維持の為にコストが生じるのですからままならないものです。
生活の為に身を削るのは何処でも同じなのでしょうが、現状外部に
受注せねば維持できない施設下での生活は大変なようです。
その維持を担うのが施設の人々の存在と諸外国に赴く派遣による
医療提供者達の存在。私も一応後者の末端なのですが加入して二年
経とうという今でも彼らに肩を並べられる自信はございません。
まもなく、彼らが一斉に集いそれ相応の募る話の交換の時が来て
私に言えることはまだまだ多いとは言えません。精進ですね。
第六部 二百三十八頁
ハティ 2017/08/27(Sun) 01:27 No.257
八月二十六日
今期の行われた夏の祭りに赴く時間が取れる機会に恵まれて今宵もまた
門限を過ぎての外出に赴いたのですが、今回は待ち合わせの場所が悪かったのか
早速道に迷ってしまいすっかり落ち合う時刻を丸々一刻過ぎての再会になってしまい
時間を無為にした事を反省したい気分です。
案の定、彼も私が迷子になっている可能性を考えて方々探し回ってくれたようで
それが遠目に見えてしまった日には胸の割かれる思いで酸味を啜っていたものです。
大衆につられてやってきた機会も一度すれ違えば、私の性分ですから後悔も悔やみも
しきれない後に引くような罪悪感をずっと抱え込んでしまえるのでしょうね。
でも、彼は私の失態を責めずに温かい言葉を掛けて許してくれました。
まるで、昔の私たちの立場が逆転したような感じ。故郷を失った者の怨嗟を懸命に
癒そうと真剣だった当時の気持ちが蘇り懐かしさが込みあがったのが印象的でした。
お詫びになるかと手土産を差し上げたのですけども、それでも時間は取り戻せないもので
祭りの騒ぎも大分沈静化したなかで、共に過ごせる時間を本当に惜しんだものです。
第六部 二百十七頁
ハティ 2017/08/06(Sun) 03:00 No.253
八月五日
毎度の事ですが、私が周囲の警邏に当たる日は通行人の方に何かと心配の
お声を頂く事もありそれが業務の遅れが生じており、状況の打開はなかなか
困難な状態になっております。
腕章のあるなしに関わる事でもなく、純真な親切心なら善意に受け止める事は
大事ですが、それを代価に機動に後れを生じさせる素養を周囲の者が
どう見ているかは気に掛けるべき所なのでしょう。
とはいえ、結局は市井に不安を生じさせぬのが我が務めであるならば、
真っ当に向き合って取り組む事に機動の優劣を持ち出すのすらも規律の乱れにも
繋がるのですから、各々の裁量で精進していくしかないのです。
この類のご意見が出てきた際の備えとして一筆認めて置こうと筆を取りました。
幾らでも気づく切欠はあったものですけども、いざ直面しないと理解に
及ばないのですから百聞は一見に及ばぬ証左とも言えるのでしょう。
第六部 百六十一頁
ハティ 2017/06/11(Sun) 02:56 No.229
六月十日
今年もまた朱き月による二次災害の後始末に追われておりました。
以前に在った時よりも時期は早めに到来しておりますが、その分災いの収束が遅れる可能性の
ある厳しい戦いになる事をこの機に覚悟をしなければならないようです。
具体的にこういった一連の現象に対応していく手段は少ないのが現状で、
考え得る限りの手段を講じてはいるのですが結局は時間が解決する問題であることを我が身で
立証してしまったのが本日の出来事でございます。
義務や責務だけで行動できる存在はおらず、自ら目的を見据える事、
それも手近で効果のある目標を立てる事が今の私にとっては必要な事で、環境に振り回されて
我を失ったせいで対処できるものも出来なくなる事態は避けなければなりません。
今日は旅の詩人様のご恩により立ち直る事が出来ましたが、今後は人の手を借りるような
甘い事では世の中に迎合できぬと知り、今一度心を強く持って心に臨むことを誓います。
街に長くいれば食傷を持ち得る事も在りますが、旅人にとってそれは知れぬ所。
常にそれを意識して行動すればまた違った対応ができた筈なのです。
そう思えば、本日の私は事あるごとに弱音の連続は情けない限りです。
例え普段の生活であっても、これは紛うことなく恥ずべき事柄なのですから。
第三章 百六十四頁
ハティ 2017/05/30(Tue) 04:50 No.222
当時の戒め
「疑念は己が危難にのみ享受せよ。撒けば新たな病を呼ぶ」
「恩を利用する莫れ。恩知らずの道化に勝る不義も無し」
六月十四日
何かと湿気の籠るこの頃です。この時期は少しでも気温が上がると体調を崩しやすい
傾向にあるようなので特に要注意なのだそうで我が家でも温熱乾燥させた炭を壁に掛けて
湿度の調整を行っております。
植物にとっては良い環境なのでしょうが、私達にとって好ましくない環境なのですから。
さて、仮面舞踏会という催しが今期、毎年のように行われるようですが正に今のような
何かと外の環境につられて溜まりがちな不快感を払うのには都合が良いのだろうと父上が
語ってくれたことを思い出します。
人が人と接する当たって、身分の違いが双方に影響を与える事はままある事です。
その身分の違いを隠す事で、卑屈、傲慢、憐憫、嫉妬、全ての感情を平らに均してくれる
のは仮面の無い状態とは大違いとも言えるでしょう。
余計な損得を考える必要がないからこそ平穏が得られるが故に、ただ踊るだけでも
有意義な場合もあるという一例になり得るのだそうです。
人とは考える事の出来る存在なのですが、考える事を辞める事が平穏となってしまうのは
皮肉なものですね。
第六部 九十九頁
ハティ 2017/04/09(Sun) 09:54 No.211
四月九日
本日は先日の不可思議生物の騒動から漸く解放されましたので、事の始末に当たっている何時もお世話になっている船員さんの施設にお邪魔して後片付けのお手伝いをしました。
父上は既に出航して沖合に赴いていたため無事ですけども、押し寄せた潮の影響により大破した帆船の修理が済まない限り、次の出航も難航する可能性を鑑みればまだまだ騒動の痕は残りそうです。
今回は、地形調査をまとめた書物を今後の航路の参考にお渡しし、帆船の修理とは具体的にどのようにすればいいのか船大工さんにから教わりながら、それに纏わる雑務を請け負いましたが
ただただ、お忙しい中だというのに応対してくださった皆様の温かさが身に染み入るばかりです。
此方でも状況の把握しかねる天災も同然の先の現象にも関わらず、この街の人たちの楽観さには危機感を感じるべきか、業務の支障が軽減されて助かった断じていいものかこれもまた把握しかねる事案ではありますが、
夕飯に例の生物の構成物である謎の肉をご馳走になった時にはどのように反応すれば良いか分からなかったので、満面の笑みを浮かべて誤魔化してました。
味はまるで頭に入りませんでしたけども、周囲の皆さんは美味しそうにしておりました。
単に私が考え過ぎな面も無くはないのですが、今回の騒動は悩みばかり頂いて釈然としない日々が続きそうです。
そういう意味でもお腹いっぱい、と言うべきでしょうか。
第六部 六十頁
ハティ 2017/03/02(Thu) 01:01 No.210
三月一日
この街の空気は幾度も入れ替わり、新しい季節も近い頃合いに新たな出会いに恵まれました。
平和への貢献において武力よりも大事なのは、こうした新しい人たちとの出会いと別れ。
それは宛ら、煤の籠った室内の換気に開く戸のように、私にとっては貴重な出来事なのだと思うばかりです。
しかし一方、それがなぜ貴重と言えるかという理由を探している内に気づいたことがあるのですが
ハリエットが現れてから外の者に彼を紹介したことが数える程しかない事は少し驚くべき事でした。
業務に追われているとはいえど、交友関係は広くあるべきなのですが、難しいものです。
逆に、訓練施設では目立つ存在になってしまわないように気を付けないと
好敵手同士、切磋琢磨するだけならいいのですが私の今の立場だと常連だということを
知られてしまうと探っているのではと在らぬ疑いが持たれてしまう可能性も据え置けぬ問題です。
そう考えると、所構わず訓練できる素養がちょっと羨ましい気もしますよね。
第六部 三十三頁
ハティ 2017/02/02(Thu) 11:54 No.209
二月二日
この時期、巷ではバレンタインと呼ばれているそうでほんのり甘い雰囲気に酔い痴れるのに良い
と噂され始めております。その甘さを湛しめるのはチョコレートなる飲料です。
材料はどれもこの街で取れるような熱帯の環境では無い為、希少性を考慮して
時期を定めて振る舞うようにしているのだと推測しております。
単純なチョコレートだけでは香りだけ甘くて苦みの強いものなのでホットチョコレートに
加工する時に調味料を加えて工夫して飲みやすくしているみたいですね。
お陰様でとても美味しく頂けます。この季節、温かい飲み物は助かるものです。
因みにチョコレートの香り成分は我々だけでなく動物をも惹きつけるものですが、
苦みの成分の主体である毒を効率よく分解する能力を持ち合わせない彼らに飲ませる事による
中毒には要警戒事項であると、周囲に注意を持ちかけるべきだと思います。
魅惑の傍に棘を持つ、本来黙って摂取されてては自然界では生き残れないのですから。
しかし、それをも乗り越えて平気で摂取できる我らの脅威を知る季節でもあるのです。
第六部 一頁
ハティ 2017/01/01(Sun) 02:52 No.208
一月一日
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
本日を持ち、齢十五の生誕の日として祝いの席に興じる幸に恵まれました。
これも偏に皆様の御蔭にございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、今年の抱負についてですが新たに六部目の日記帳を頂きましたのを機に
今後は自身が冊子に記載し、今後も続けていくこととします。以下、説明致します。
「惑わず乞い寄せよ。己が百花繚乱の春を来らしむべし」
今までの私は自らの知恵を蓄えるために、主に書籍から拝借した活字に頼っていた
面が在り、どのように外への接し方を工夫すればいいかを測りかねておりました。
今の立場は、親族が傍にいた診療所ではなく治安部隊に屯している事を改めて
認識し、連携を密にすることが結局は己が命を、牽いては皆の命の安全に繋がる事を
今一度心に留めながら、出来ないことをそのままにせず物を尋ねる勇気を記しました。
「由らしめたるは知らしめるに非ず。己が原初を心せよ」
そして、私の蓄えた知識の由来は私自身が未熟なリにも自身の経験を煮詰めたものに
過ぎないのです。これらを人に伝える手段は数あれど、真に知るには少なくても
私のこの十五年間を体験した者にしか成し得ないとも言えるのです。
是はこうあるべし、伝えて頷けども本質の理解には及ばない。これはお互い様なのです。
理解する努力は必要ですが、その力にも限りが有る。故に社会という物が存在する。
この真理、人の原初を心掛けて人と寄り添い互助を以って街の環境保全に努めます。
元来、生物の本能として備わった個体維持の機能はその役割を分化させることで
その術を広めて行きました。これが、人が社会を背負わなければならない根源、本質。
故に、何でも独りで行わねばという考えは、少なくても己が視野を狭めてしまうのです。
自身が時に見失いがちだった以上二点を添えて、より一層の街の治安に貢献しようと
決意を記しました。
第五部 三百六十五頁
ハティ 2016/12/30(Fri) 21:40 No.207
十二月三十日
年の瀬に併せて親族御一同もお見えになり、一家も賑やかになってまいりました。
積もるお話は多々あるのですが、こうして対話の時間をいただいたからには
無駄にせず過ごして参る所存です。
私もこの時期一つ超えれば生誕してから十五年。より一層社会の構成員として、
自責を伴なう成人として気を引き締めていかなければなりません。
我々が我々であるためには必要な事です。
勤勉を重ね、謙虚な姿勢のまま慢心せず、施しを互助に替えて平和へと導く礎に
これからも治安部隊の一員として、また街に住まう個人として出来る事を
勤めて参ります。
そして、このような時期にも関わらずご親族と共に過ごす機会を
恵んでいただけた事にも限りない感謝を。
第五部 三百二十四頁
ハティ 2016/11/19(Sat) 23:58 No.206
十一月十九日
冬の季節に差し掛かるにつれて、備えに奔走する行き交う人を眺めて私はぼんやりと
季節の到来を悟ったものですが、今はこうして日常を支える存在の有難さに対して盲目に
当たり前のことだと惰性で過ごす事の愚かさを悟る日々です。
寒気が襲い始めた時期から屯する場所の環境保全の為に私は今走り続けております。
それがどれだけ大変な作業かは実際にやってみるまでは実感の湧きにくいものでして
薪の調達、乾燥の具合を見越しての保存、焚火を前に剪定作業、湧かす灯を利用しての
各種用立ての作業から、機を見ての換気作業。
寒さを和らぐだけでも斯様な作業をその季節が過ぎるまで毎日行う必要がある事に
何故だか、私は少し眩暈に近い感覚を覚えてなりません。
これらを何の文句もなく熟す皆様の不断の働きに、敬意が欠けていた事は
認めざるを得ない事実です。猛省して余りある不覚にございます。
さて、最近文通を行おうという近所からの通達がありまして時折様子を伺って
いるのですが、私の場合、文通をする相手に全く恵まれておらず、
そもそもこの街以外の事以外は尋ねもしない世間知らずが見分の役に立つかも曖昧で
今一活用法が見出せずに困っていたのです。そんな遠くへ離れた場所にお知り合いが
居る訳でもなく、街中でわざわざ文を通さずとも話す相手は近くにあるのならそれで
済ませば良いのではないのでしょうか。
以上の状況を実は、あの方に相談してしまったのですが直ぐにそれが私の大きな間違い
だと、思い知らされたのです。
言葉の引力には強弱が存在する。たった一言がその人を影響させてしまう。
気持ちの整理が付かない時は、やっぱり手紙は必要なのだと思いました。
つまり、今私が書いているこの日記のように思いを綴るのに媒体が別になっただけ。
贈る相手に向けての思いを追記すれば、あの人はどう思ってくれるのだろう?
嬉しい様な怖い様な、不思議な気分に邪魔されて口にできないのであれば文章にして
みるのも良いのでしょう。
しかし、それにしてもどう送ったものでしょうね。
どう足掻こうと不毛な堂々巡りに陥ろうとも、不思議と不安はないのですが。
第五部 三百頁
ハティ 2016/10/27(Thu) 05:27 No.202
十月二十七日
本日は、私の家の近所で馬の脱走案件があり方々に独走状態の馬が無いか手分けして
探す事になりました。
その仔馬さんはまだまだ甘えたがりの年頃で、生まれてすぐに母馬が亡くなってしまった
影響もあってか、飼い主さんとあまり馴染まなかったようで、厩舎の清掃のどさくさで
ついに、逃げてしまったとのこと。
街の中では大規模な飼育施設もなく、仔馬さんにとっては窮屈だったのでしょうね。
もしかしたら、お母さんが亡くなった事にも納得できずに探しに向かったのかも
知れません。
幾ら足は速くとも、単身で街の外へ出れば何時狩られてもおかしくない状況。
一刻も早く手がかりが見つかるよう、追跡をしておりました。
そのお馬さんは、日の落ちるまさに直前にとある牧場の付近で発見されて事は
収めましたが、未だに興奮気味になっているお馬さんを見かねて
馬主さんにお返しする前に牧場の方のご厚意で落ち着くまでそこでお泊りして
貰うことになったようです。ともあれご無事で何よりでした。
私たちは、当初野生馬の群れが生息していると思われる牧草地帯を当たっていた
のですが、特徴を聞かされても存外お馬さんを見分けるのが大変だったようで
あちこちとこの馬か聞きに来られてはそこへ走っての繰り返しになって大変でした。
確かに、お馬さん。みんな同じような色の毛並みで同じような尻尾ですからね。
捜索の最中、差し入れを下さいました方もいらっしゃいますので近いうちにお礼と
ご報告をする必要がありそうです。
今のうちに、お礼とお詫びの品を選び直して差し上げないと、また見つけたから来いと
先刻の二の舞になっては、体力の浪費になりかねません。
第五部 二百九十三頁
ハティ 2016/10/19(Wed) 08:02 No.200
十月十九日
本日は朝市で珍しいお魚さんを手に入れましたので次に入手した際の忘備録として
此方に記載する機会を頂戴願うものです。
このお魚さんは自分の生まれ故郷を知っていたのだそうです。
しかも、その故郷に戻る為に河川を渡り流れにすら逆らい身を削りながらも遡上
していく姿は圧巻だと言われます。そして、次の世代にも故郷をお伝えする。
どんなに海を渡ろうと故郷が恋しいなんて哀愁を誘うお話ではありませんか。
そんなお魚さんがこの手にあることも然り。
漁をする側には、毎回同じ場所を通り抜ける習性は回遊魚と呼ばれてお魚さんの
故郷を一度見つけてしまえば体のいい漁場になってしまうという酷い一面があります。
然しながら、その身は遡上の前にあれば繁殖期を目前に海洋からの豊富な資源を
油分に取り込んでおりまして、その滑らかな風味は独特ながらも絶品。
もう一点珍しいのは、この豊富な資源は全身を血の如く通わせているのか、
捨てる部位が全く無く総てが無駄無く頂ける将に自然の写し身のような存在であることです。
身は元より皮も塩焼きでも美味しく、骨は煮詰めて柔らかくすれば身の風味を残した
骨の基にできる上、本来取り除かれかねない鱗すらも他の魚介のものより柔らかいため
焼いた皮に鱗が有ろうと問題は無く、寧ろ我々にとっては彼らの鱗こそ、
皮膚であると知らしめてくれましょう。
但し、上記をも上回る珍味が卵です。此方も豊富な栄養を取り込んでとても美味で
驚くものでした。
海洋に比すれば栄養価が限られているのか、粒は大きめで、パンに載せるのには不向き
ながらも独特の甘さが麦の甘みと相まって美味しいです。
因みに磯の香りとパンは余り相性は良くないので油脂を追加して置くとより美味しく
頂けると思います。
今回手に入れたのは塩漬け前の新鮮なものだったので、身や内蔵に含まれる線虫を
キチンと取り除いてから加工すると食感が安定して良いそうです。
また、卵は卵膜を鹹水の微温湯に浸して徹底的に取り除いてから葱のドレッシングを
加えて塩漬けにします。
それでも痛むのはかなり早いので、常食は厳しいようです。
第五部 二百七十三頁
ハティ 2016/09/30(Fri) 09:22 No.188
九月二十九日
今回の情報収集に関してご報告申し上げます。
第一に、この時期に到来し始める腹痛の症状を訴えて来る方の
普段の食生活について調べました所、一夏が過ぎても尚、食性を変えない事により
代謝が追いついていない類の話が多く、また、季節問わず同じ仕事にある場合
体力に余裕があると余計に働きがちにあり、余計に代謝を崩す症例を
話を伺う限りですが、疑われます。
父上が幾ら注意しても聞かないと仰せられる海に生きる方の働きぶりに
似たような症例。これは彼らだけの話では無かったようです。
次いで、酒場では思いの外刺激物を好まれる傾向が在るため
この潜在的な脅威を無視すべきでないと考えます。
憩いを求めて己が身を削りに向かう。矛盾を感じる話なのですが
不思議な事ながらそれが罷り通る程の魅力が在るのでしょうね。
それが向かう果ては、上記の脅威があるからこそ潤う存在がある事です。
何が正しくて、何が間違いか。論じる資格は我々にもありません。
最後に、万人に通じる理を一つ。
疲れた時には甘い物を食べましょう。
第五部 二百五十五頁
ハティ 2016/09/12(Mon) 08:03 No.151
九月十一日
今日はハリエットの活躍の場に恵まれまして、基本の稽古だけでなく
杖術に相対して下さいました協力者様により模擬戦としてその胸をお借りしました。
結論から申し上げますと、一分も持たずに倒されて、私の未熟を存分に思い知りました。
あと、もう一つ実感できた事は意外な事に思えるかも知れませんが
後ろに転倒して尻餅になった時の痛みが馬鹿にできない事です。
聞きしに及んだ状況でも一度経験すれば耳の役割のどんなに儚いものか。
術で痛みを抑えでもしなければ立つのも苦労するものなのですね。
そもそも、体運びは頭で考えて対応するものでもなく経験と勘を必要とする。
この時点で私はまだまだ成長の余地は尽きぬと云うものです。
今後は訓練の際に基本の形状での体運びを安定させる事に努めます。
ゆくゆくは、己が身一つで全ての形状を習得して、色んなハリエットと仲良くなりたいです。
術を行使すればそれ等は容易い等と、それは驕りと恥じるべき事です。
第五部 二百四十五頁
ハティ 2016/09/02(Fri) 11:57 No.135
九月一日
何時もの職務後に嗜む読本時に見知らぬ街人に図らずも
お声をかけてしまいまして、大してお役に立つ事もなく
夜道を共にしてくださる恩を受けました。
彼には改めて感謝を伝えたく存じます。
さて、その者から聞いたお話ですが道を彷徨い悪漢に囲われた際に
彼の窮地を救った者が我が隊の者とのこと。
お役に立つ事は吉報の限りですが、暗躍を旨にすべき
組織の要が随分口の軽い輩に軽々しく名乗った事で
余計な仕事を抱えはしないかと不安にさせる一幕でもありました。
最近件の組織による襲撃があったという一報があった矢先、
渦中の者がこの事を知れば、彼を餌に誘き寄せる事など、
堅気にまで被害が被ることを考えると、名乗る相手は選ぶ事も
また、自衛に繋がるのではないかと思います。
時として信頼としての無防備を敬意と示す場合も有ります。
ただ、それもまた時と場合があるのでしょうね。
願わくば、この一事が仇となりませぬよう。
第五部 二百三十九頁
ハティ 2016/08/27(Sat) 10:43 No.120
八月二十六日
残暑の時季にてこの街にも祭りなる祝い事が行われております。
先刻、初めて街中にお邪魔してみたのですが想像以上に人の賑やかな事、驚きも一入でした。
しかし、それ以上に驚いたのはハナービなる中空を舞う大火の事です。
扱い一つ間違えれば惨事にだってなりかねない恐怖でしかない火を促す薬剤が
広場周辺でこれでもかとばかりに使われているではないですか。
お話には伺っていたのですが、誠に怖ろしい事態です。
とはいえ。この手の薬剤の使い道を考えれば、これでも利用法としては全うな方
なのかもしれません。先人の知恵ですね。
この仕事についてからというもの、外界とは本当に新鮮なもので聞くと見るとでは
全く頭で追いつくのがやっとで実践することによる経験量の桁の深さに感動を覚えます。
こうして祭場の下見が出来たからこそ、有事の対応に際しての下地になったのですから。
今年に入って急に祭りに出るに相応しい晴れ着をご用意くださった事には過ぎたる栄誉
ながら、その実、環境の激変に混乱と恥を晒してしまう可能性の配慮と受け止めております。
元来、晴れ着姿を身に着ける事は元より、ご覧下さる事をも贅と一蹴されるが我らの務め。
こうして、機に恵まれる事を今に至り光栄に存じます。
度重なるご面倒ご迷惑をお掛けしてしまい、誠に恐縮です。
第五部 二百十八頁
ハティ 2016/08/07(Sun) 12:14 No.114
八月五日
母上様へ、此方でもお知らせいたします。
先刻、急な申し出にも関わらず湯浴みの手配をして頂き誠にありがとうございます。
もう少しでお風邪を召してしまう所だったので本当に助かりました。
口頭でも事情はお伝えしたと思いますが此方に事情を悉に記して参ります。
港町では特に、荷の運搬は重労働です。市場や寄港船にて作業に勤しむ皆様に
日差しに負けぬよう冷感具を差し上げている作業を施していたのですが、配布の作業が
思いの他重労働で大変な作業であることを念頭にも置けなかった私の不覚にございます。
施術を施し冷水を満たした段階で魔具の効果は実感できて苦労の甲斐も
あったものですが、配る段階でその魔具の効果が集中して私に襲い掛かるのです。
籠の中の冷気、それが身体に侵食していきその動きを鈍らせる事には危機をも憶え
我ながら恐るべき脅威を孕んだものを作ってしまったと後悔に襲われたのは間もなくに
私は、あの当時その心をも凍結させかねないあの冷気から逃げるべく、身体を作動
させていたのです。己が魔の傀儡も同然です。
その現象を軽減させるべく、提供者に必要以上に方々の配布を願い出たのも云わば
私の逃げの姿勢がそうさせたというご指摘にも何一つ言い返せないのです。
仕舞には疲弊と体温の低下によりお屋敷に付く頃には倒れ伏す可能性をも覚悟した
次第です。当時は碌に口も回らずにあった私にも関わらず応対していただき感謝します。
第二部 四十四頁
ハティ 2016/07/31(Sun) 22:35 No.111
当時の戒め
「身に降る万象を浴び続けよ。其れこそ己を象る糧となる」
「己が糧握らば、世の幸を享受し得る真の人の道と知る」
二月十三日
本日も一面が雪一色です。
一冬の到来により、今年も例外なく転倒被害による診断が増えております。
当施設に来る前に二次被害に見舞われないように周囲の雪かきは必須であり、
寒い中を貴重な労働をそこに割くのは自明にございます。
そんな毎年大変な思いをしている私達ですが、今年は協力者が現れまして
そのことについて記そうと思い一筆取った次第です。
姉上は既にご存知だと思いますが、かの氷河に閉ざされた国からの移民の少年が
今年から、私達の施設の雑事を手伝うようになりその影響で、関連施設に住まわせる
という動きが近頃生じまして。本日は私が請け負った雪かき業務に助太刀でお越しに
なったという事です。
あの大規模移民騒動という災厄から約三年。漸く平穏が戻ったような気さえします。
冬の終わりとともに雪に沈む終焉。辛くも逃れたのは聖王殿の奇跡によるものであった。
その逸話を落ち着いて聞くことができたのもちょうど今頃の話です。
当事者にとっては雪の一粒でさえ振ろうものなら思い出しかねない脅威だった筈の
この時期に、隣の彼は手慣れたようで雪を除けていくのです。
この隣人を眺めている事で、人とはどのような困難にも強くあれる一面を垣間見、
その事に少し感動した事は、一生懸命手を動かすことで誤魔化すことが出来た
のでしょうか? 少し不安の残る一日になってしまいました。
第五部 百九十六頁
ハティ 2016/07/15(Fri) 13:02 No.95
七月十四日
今日は記念すべき日でした。
齢十四の半ばにして、人に真っ当な手解きを与える立場に立てたのですから。
不思議な縁に手伝い、この季節の節目に業務の外でお役に立てる
栄誉に感謝して以下に顛末を記します。
この月の半期、彼の街ではタナバータなる風習に備えて、各々紙束の準備を進めておりました。
その晴れの時期に、私は紙細工の得意な友達に決闘を申し込んだのです。
すると、彼はあろう事か自らの手の内を私に明かした上で、
その折り方ならよく飛ぶと教えられてしまう屈辱を受けたのです。
折り方は誰でも分かるような合理性をもちながら、飛ばし方は自在。
直ぐ目の前で、手元に帰す細工までやってのける挑発に私は意地でも彼に勝る
手法を編み出せないか訓練に明け暮れる事になったのです。
当時は部屋に篭ったまま、生返事で応対して申し訳有りませんでした。
暖かくお見守り下さりありがとうございます。
尾翼の無い鳥はあり得ない、かと言って形に拘ると夜空の気紛れに
どう翻弄されるとも知れぬ孤独な戦いでした。
研究というのは並べて其のようなものなのでしょう。
研究に成果を期待する事もまた、遠い出来事のように思えたものですが、
どうにか形にして実践に移してみようと決心した頃には既に時期は終局に在りました。
もし、少しでも遅れようものなら飛ばす行程すら孤独だったのだろうと
思うと実に怖気が立つ話です。
しかし、いざ実践となった所で肝心の願いを失い己が虚栄心を表に露出して、
我に返るのです。私は一体今まで何をしていたのだろうか? と。
この立場を忘れた自分を恥じる事も、彼は見越していたのでしょうか。
寧ろ、それ程までに紙細工は魅力が在るということなのかもしれません。
考えの整理に手を差し伸べていただいたのが通りがかった壮年の同志です。
彼の方がお声かけてくださったからこそ、紙細工でのトラブルは消化されて
彼の試作品を素直に評することが出来たのですから。
本当に貴重な機会を賜り感謝しております。
次にお会いする機会が在りましたら、彼の作品でうまく飛ばす方法を
お聞き出来ればいいなと思います。
第五部 百七十三頁
ハティ 2016/06/22(Wed) 11:38 No.66
六月二十二日
この時期こそが治安維持部隊に於ける災難の始まりでした。
不吉な現象を象徴する紅き月から放たれた、日の長い時期に見舞われた
樹木を選ばず生えてきたのが彼の眷属とも呼べる赤き実でした。
これに限らず、この街には幾多も不思議な現象に見舞われるのですが
市民の皆さんは、一様に害なければ只の恵みに過ぎぬと手を伸ばしがちです。
それで事が収まるのならかわいい物ですけども、この現象は我が隊に
理不尽なまでに膨大な相談が押し寄せてくるのです。
此処に、私が耳にした相談を抜粋すると以下になります。
一・大事に育てた木が赤い斑点がでる病気に冒されている。犯人を捜して欲しい。
一・自身の土地の果実では足りぬ。隣人のものを取っても良いのだろうか?
生えてきたのはこの時期限定ならば彼の者に所有権は無いと思うが?
一・果実を食べた子が変な病気で倒れてしまった。毒があるのか調査して欲しい。
一・果実が市場に流れているせいで領域が独占されて商売にならない。
ギルドに指導し、この独占を禁止にして貰えるようにして欲しい。
一・この果実は何時でも食べていたい。この街に無いならば何処で手に入るか。
一・この深き恵みに感謝したい。 < 一 体 誰 に >礼をすれば良いのか?
大口に言えば皆さん大なり小なり誰がやったのか事の真相を知りたいという
趣の相談が多いのですけども、この時点で答えの無い難題に怒る存在が想像付くと
思います。この日記をご覧になった皆様もきっと同じような災難で苦しんで
おられるのでしょう? お気持ちは痛いほど伝わっておりますよ。
災厄は時期を選んだりしません。我々はその中で市民の皆様に指標となる
答えを一刻も早く見出し、治安の維持を努める覚悟を此処に願うものです。
同じオルガニアの民だからこそ、不可解な現象の流れに任せること無く
不当な形で提示された恵みが混沌を生み出す事を知る必要があります。
イチゴが無いと泣いちゃうお子さんに、薬の素材として在ったキイチゴ削っては
与え、また、木に生るイチゴのなかには味の無い果実もある事を伝える教訓として
一同邁進せざるを得ない状況を呪うこと無く、強く生きましょう!
第五部 百五十九頁
ハティ 2016/06/08(Wed) 02:54 No.61
六月七日
若い内の苦労は買ってでもしろとはよく言ったものですが、背負い込んだ苦労とは
希に命掛けだったりするものです。
本日は休日を惜しんで任務に勤しむ姉上に、見舞いの品を献上するよう遣いを
引き受けたのですが、その時期が夕暮れである事をつい忘れてお話しが長引いたのが
仇となり、業務でも何でも無い人の気配が少ない建屋にて迷う羽目になったのです。
恐らく、予めその可能性を懸念なさっていたのでしょう。姉上の見送りの進言を、
お忙しいのですからと断ってしまったのが後の茨の道と相成りました。
心細いまま、何処へ向かうとも知れない廊下を渡り彷徨っていた所を渦中の者による
奇縁に転じる事も思えばそんなに不思議なことでは無かったのかも知れません。
お話しして判ったことは、私が人前で強がることすら出来ない虚けである事で。
その程度なら、皆から言われずとも嫌と言うほど自覚している身では在るのですが。
見知らずの他人の為に命を差し出す覚悟を前に、果たして同じ事が言えるのでしょうか?
少し前まで、家に帰るのも怖くて戻って付き添って欲しいという甘えをも
抱きかねてさえいた私が恥ずかくて。それが、行く行く己が責務に影響し得る立場に
あるのだと感じて漸く、私も目が覚めたのです。
数奇な出会いにも思えば感謝の伝えかた、その在りようが変わる。
私がこうして渦中の存在に巡り会い、勇気を貰い。雷雨の中、門限を守ることが出来た。
これは私にとっては間違いなく多大なるご恩他なりません。
もっと素直にこの方面で感謝を伝えられなかったのは悔やまれるところです。
第五部 百五十五頁
ハティ 2016/06/04(Sat) 19:19 No.60
六月三日
最近、理由は様々ですが部隊内の欠員が見受けられまして最近では断続した
周辺地域の騒動に巻き込まれているとのお話です。
関連性は検証が必要とのことですが、我が隊としても対策が求められます。
万が一、急を要する処置が複雑となりそれに伴う収容施設を利用する際に
施設の利用が妥当であるかの判断は隊全体で行う事は難く、診断が必要な
人材の招集手段及び、連絡手段の確立を有事に備えていくことを提案し
今後の教訓にすることが望まれます。
収容限界を超えた状態での治療が困難である事、更にはそれに伴う住民からの
抗議が予想されるためです。部隊内でもその問題を軽視する発言が見受けられます。
平時であろうが収容施設側の者に偏った負担を強いる道理はありません。
この問題を住民の皆様へ呼びかける手段は今のところ在りませんが、
各組合にも同様の問題を提起して収容状況の改善を呼びかける為に
各機関に協力を要請できるよう、お力添えを願えればと思っております。
追伸:
休憩中にお目に掛けた隊長さんはとても大らかなお人でした。
彼の者に倣い、組織の把握すら出来ずに居た事を恥と知り、
今後も精進しなければなりませんね。
第一部 二頁
ハティ 2016/05/15(Sun) 00:55 No.43
当時の戒め
「己が内を常に瞠れ。時至らねば何事も理解など出来ぬ」
「己に成された病み事こそ、この白紙の束にて財を成す」
一月二日
私が術の存在に気付いたのは二年前の夏、叔父様がこの港町へお出向き下さった
時の事でした。
当時の厩舎は、土地の導入が始まって間もなく創設されたばかりであり、
遠方からお越しの際の荷車を受け入れる事すら私達としても初の試みで、
環境の激変にお馬さんが怖がらないか、ちゃんと休めるのだろうかと
それは緊張したものです。
近所からお裾分け頂いた藁床に、取れたての穀類。ここから漸く我が屋の年輪を
数えるという実感を、叔父様から数々のお褒めの言葉により頂戴致しました。
叔父様がお越し下さったのは、実は仕事としての趣も兼ねており父上との緩い商談も
混ざりはしたのですが、その数日間こそがまさに私としての起点でもあったのです。
叔父様がお帰りになる少し前。何時ものように牧草地までご案内していた時に
道中までお馬さんに乗ってみたいと提案したのです。当時八歳の末娘という余りに
身分の弁えない要求にも関わらず、叔父様は快く受け入れて頂き、かなり時間が
かかったものの、ついに初の乗馬は成されたのです。
教えて貰った通り、手綱と鞍を力一杯掴んでその場で固定することに必死に
なって最初は周囲の景観なんて楽しむ余裕は無かったのですが数刻も経てば
そんな環境にも慣れて、牧草を食むお馬さんの様子を眺めながら雑談も楽しめるように
なりました。
人と動物が共に生きていくという選択を導いてきたのは先人の知恵の賜でも、
それを成立させるのは相応の歩みを必要とする。しかし、私のこんな些末な接触でも
馬の警戒を全く引き出さないのは何か自身で意識していない才覚がある。
不意に叔父様が一連の挙動に所感を示して頂き、そこで思い返しただけで
心当たりが幾つか思い浮かんた事。これが、私の理論の始まりでした。
他の人なら近寄ろうとした瞬間に距離を取る程警戒の強い動物だろうと、
私は触れることが出来たのです。それが特異な力によるものだとハッキリ
意識できたのはその時が初めてで、そのお陰で私は人を手助け出来る為に
術を磨くことが出来るようになりました。
独りでは気付くことに時間が掛かることでも、人は寄り添う事で、それだけで
言葉も行為も力になり得る。
技術も魔術も同じ力から来ているものだと私は思います。
術があっても、才覚があっても、それを自覚できなければ無用の長物ですから。
第五部 百二十頁
ハティ 2016/04/30(Sat) 03:13 No.42
四月二十九日
本日は、港にて父上がお世話になっている船員の方とお話しする機会がありまして
最近の出来事や遠出された父上の事を教えて頂きました。それはもう毎日のように
手当の必要な過酷な環境ながらも働きの甲斐があって航行は順調とのことです。
まだ半月は作業が続くが帰還の日時は未定との事。父上にしてあげることは無いか
と困っていた私に、肩でも叩いてあげれば良いのでは無いかと助言を頂き、
その為の訓練をしようという話になってしまいました。
治療は施術で事足りるのでは無いかという疑問に、術では辿り着けない境地を
説に語る船員さんに心を打たれて皆さんの肩を叩いて力の加減がどんなものが良いのか
少し試して見ることになったのですが、四、五名様対応したところで手を止めるのも
気が引けてしまい結局全員の肩を叩くことになりました。
お陰ですっかり夜も更けてしまい、門限も過ぎてしまい、散々な状況に。
帰り道の付き添いを申し出て頂いたご恩はお気持ちだけ頂きまして、一筆門限を
過ぎた理由を認めて頂き、お家には何とか入れて貰えました。
そもそも、家にたどり着くまでにも想像を超えた寒さに避難も必要となり、
己が行為の無為を他人に諭されて惨めな気持ちまで背負い込んだりと一筋縄では
行きませんでした。業務以外の所でこんなに疲れたのは今年初かもしれません。
しかし、全ては頑張っている父上の為にしたことだから、
顧客様への詰問は避けて頂くようまだなんとか説得しなければなりません。
ですが、今は疲れてしまったもので十分に休息を取った後に応じようと思います。
第五部 百七頁
ハティ 2016/04/16(Sat) 00:49 No.41
四月十六日
春の訪れを風の恵みに垣間見る日々にございます。
海岸沿いの街という特色も在ってこそ穏やかな風には様々な幸を思わせる物です。
さて、所変わって街外れに私達が世話をしている畑があるのですが、そろそろ
新たに苗を植え込む準備を始めないと所狭しと茂る苗たちが可哀想になってきました。
そんなわけで、明日にでもこの苗さんを自由にのびのび出来る場所へご案内します。
これもまた、この時期ならではの門出なのかもしれません。
身近な薬草でしたら屋内にもありますが、畑に植えるこの子達はそれはもう
宝石のように輝くものですから、言うなれば我が家の育てるお宝です。
また、田植え耕しも実は数少ない家族皆での団欒でもあります。
我が家のお宝で家族での一日すらも彩ってくれるなんて、寧ろ愛おしい程です。
なんだか、気合いが入ってきました。
そんな気合い序でに、厩舎のお馬さん達のお手入れも念入りにして
皆で力を合わせて大事に育てていきましょう。
明日も今日のように穏やかな天気である事を切に願うばかりです。
第五部 八十三頁
ハティ 2016/03/23(Wed) 20:44 No.40
三月二十三日
風が暖かくなりました。それと共に緑も戻り、
早くも桃色の花びらを見かける陽気です。
私のような若輩が、節目を楽しみ時を揺蕩う資格などあろう筈も無く、
また平時から日頃の鍛練はそれは欠かせぬものですが、
寒さの和らぎと共に新たな季節が訪れようとしています。
都に居る叔父様から、公務に携わる事になった私の為に祝いの品を賜りました。
述べ三年の月日を掛けて丹念に創製されたそれは、私と共に歩む相棒です。
"彼"は私の生き写し。より優れし者。半端な私の力を漆黒に塗り替えて、
鍛練の糸を手繰り寄せる標を示して下さいます。
私の能力には多数の欠点が有ります。
力を練ればそれは意図せず共に光を放ち周囲の景色を朧にし、
光を抑えれば、それは湿り気を失った土壌のように脆く崩れ落ちる。
何れを成そうと世の理を埋める如何なる要素も外界に無く、ただただ身を削ぎ
周囲の景観をも断つばかり。
それに気付いて早三年、やはり未だに彼には遠く及ばないのです。
私にとって掛け替えのない理想が、直ぐ傍に常にあるのです。
わざわざ都からお届け下さり有難うございます、叔父様。
そして、長い間私の為に御尽力頂きとても嬉しいです。大切にします。
ようこそハリエット、私のもとへ。
追伸:
先日の折れた桜の小枝は花瓶に活けてからというもの、すくすく育っております。
花開く日が楽しみです。
第五部 六十三頁
ハティ 2016/03/03(Thu) 20:52 No.29
三月三日
本日は業務に纏わる近況を記していこうと思います。
平時の業務に特段変化は在りませんが、天候の具合が良くなかった影響による
不慮の事故は去年よりも多かったのだそうです。
そればかりで無く、流通の影響にも及んでおり特に北方からお越しの行商人から、
積荷崩れによる救助要請もありました。
通行に支障が起きるほどの大荷物だったにも関わらずお怪我が無くて幸いでした。
以上からも分かる通り、先月の天候は沿岸からの湿った風の影響による雪で
私だけで無く皆さんお仕事大変だったと思います。
一面の銀世界に心を躍らせた時期もありましたけど、
地面が滑りやすいのは困った事です。
私も一度転んでしまって濡れた姿で仕事に行く羽目になりましたので。
今月は季節の境目に差し掛かり、寒暖の差で体調を崩す人が増えてきます。
ですが、これを乗り越えればきっと暖かく穏やかな季節になるのですから
もう一頑張りと思って気合いを入れていきましょう。
……でも、もう気合いだけ先走っての失態は恥ずかしいので少し自重します。
第五部 三十七頁
ハティ 2016/02/07(Sun) 12:53 No.26
二月六日
街が仄かに甘い香りに包まれる季節です。
本日は平時の業務を終わらせた後に、近くにある修練場で訓練をするという名目で
仲間数人と集まる予定を入れておりました。
私はたまたま早めに施設に入ることになったのですが、同じく施設に入った一人が
他の方が集まるのを待たずに先に訓練に参加を始めてしまい、暫く一人で取り残されて
しまい、どうすれば良いのか途方に暮れてしまったのです。
後で聞いた話によると、その方の血の気の多さは有名で先走る事もそんなに珍しくも
無いとのこと。
偶然も重なり、私も約束の時刻を前後していたとはいえ同じ部隊にあっても
必ずしも一枚岩では無い事を知る機会と相成りました。
先に知らせておくべき事なのでは無いだろうかとも思いますが、ともあれお互いに
無事で何よりということで以後の注釈としてここに認めるものでございます。
また、修練場には部隊員だけで無く一般の者にも開放された施設のようで
鍛錬の共有の場としては或いは良い所なのかもしれません。
以前に街中で所構わず素振りをしている様を見掛けて迷惑行為であると通報する
市井が在ったとのことで、その緩和に一役買っているのかもしれません。
私自身の訓練ですが、例え真剣であっても術による工夫の余地がある事が分かり
帯剣による自身の資源倹約の対策としてもまだまだ一考の余地があるようです。
ご協力頂きました皆様には感謝を。
第五部 二十四頁
ハティ 2016/01/24(Sun) 23:28 No.22
一月二十四日
温暖な季節から一転して連日の雪模様という荒れた日々です。
コートの雪を素早く払わないと雨に打たれたのと同義。大変な事です。
今はまだそれで事足りますが、遠方からお越しの方は帰り道の雪対策に
苦戦しそうな勢いです。
平時の対応に支障が生じるので余った手勢で貯まった雪を回収し、
風除けに入り口の脇に雪洞を作って利用するのもこの機会ならではの機転ですね。
雪が落ち着くまで外回りも大変だとは思いますが、苦労はお互い様ですから
弱音を吐かずに笑顔で過ごす事だけは忘れませぬよう。
慣れぬ視界に圧雪による転倒の一報もそろそろ多くなる頃合いですので
怪我には十分にお気をつけ下さい。これも、危難は私達に等しく平等。
他人事ではないのだけは肝に銘じるのが肝要にございます。
数刻前の私へ、お大事にして下さい。
第五部 十六頁
ハティ 2016/01/17(Sun) 08:14 No.21
一月十六日
まだ部隊に入って間もない状態にもかかわらず、
大惨事を引き起こすところでした。
本日一番知るべき脅威にございます。
助けて頂いたのは、通りがかりの同僚の方です。
私とは違いとても活発な方でした。
魔術の心得があり、術の実践にも立ち会うことが出来ました
いい機会だったように思います。
また、今回の事で教訓になったこともございます。
幾ら時間を節約するためとはいえ、濫りに術を行使するのを
控える事の大切さを。
お陰で今回のような油断を引き起こしたのですから、
大いに反省すべき出来事だと思いました。
父上が書いて頂いた役割を見失う事の罰を身を以て
体験したのがまさに本日の事です。
父上には事の発端を正しく伝え、
今後このようなことが無いように自らを戒めます。
「遺した災厄は己に向け濯がれる。人を盾とする勿れ」
……かつて私に捧げて下さった父上の言葉です。
でも、一つだけ気がかりがあるのです。
今回のように反省点がある度に父上の拳骨の痛さが頭に
過ぎって泣きそうになるのはどうにかならないものでしょうか。
第五部 九頁
ハティ 2016/01/10(Sun) 01:44 No.20
一月九日
朝の冷え込みは霜を降らせるほどのものでございますが
それでも、近年に比べて冷えの到来は緩やかなのではという
噂を耳に致します。余り気にしたことは無かったのですが
特に、市場では天候の反応は敏感なようです。
作物の類いは、どれほど人が介入しようとも日照時間の
違いまでは操作できないのです。
程よい雨に暖かい日差しを織り交ぜればお野菜もすくすく
育つというのは自明。市場の歓喜の声に耳を傾ければ
私で無くても気付くことなのでしょうが、今後は市場での
お声も人々の健康に少なからず参考になるものと思いました
今日この頃にございます。
新年早々、世間の波に揉まれ始めているのに気付いて
大変な事ですけども、逆にこのような機会も無かりせば
私のような小娘が街の人との距離を縮めることも出来なかった
ような気がします。
元来より、人々の身近に在るべきは医師の勤め。
今こそが、本当の意味での研鑽の時にございますれば
弱音を吐くべき時では無いことにございます。
まだまだ、この隊で学ぶべき事は多そうです。
第五部 一頁
ハティ 2016/01/10(Sun) 01:43 No.19
一月一日
こうして新たな新年を迎えた事を大変嬉しく存じます。
この日の為にご尽力頂きました関係者様にも、感謝申し上げます。
お陰様で、私も14歳の生誕日を迎え、祝いの席を頂けたのです。
これを機に、改めまして日々を精一杯生き、このご恩を
環境へと振りまき、民の平和を支えて参りたいと存じます。
今年の抱負はより勤勉にある事にございます。
まだ齢十余年の若輩である事を精一杯自覚し、いつ何時も初心に
還り、勤めを全うすることがこれまでのご恩の報いと知るのです。
親族の皆様、治安部隊諸先輩方、この日の為に便宜を頂きました
ご恩は忘れません。この宣言を抱負に代えてお送り致します。
曙の 白き遍に 天仰ぎ 御名をも問わず 願い候
今年も良い一年でありますように……
第四部 三百六十五頁
ハティ 2016/01/10(Sun) 01:42 No.18
十二月三十一日
この日記帳もついに最後のページとなりました。
そして、その翌日は私が日記を書き始めて
満四年を迎え、父上から五冊目の日記帳を賜る
記念すべき一日となるでしょう。
この機会に一年を振り返りますと、この港町は
ずっと平和だったように思います。
朝日に手を翳し、市場の活気に触れて、
潮風を感じさせないほどの年期を催した先人の知恵に
目を通す、そんな当たり前な日々が幸を呼び込む。
本当に私はこんな素晴らしい街に幸せを育まれ
恵まれた存在なのだと認識しました。
しかし、来年からはもうそんな生活に浸るだけの
甘えん坊ではなくなります。
この街にも大なり小なり災厄が降りかかっております。
この街の支えとして、日々賜った幸せを民草に還す時
なのだと気を引き締め、業務を請け負うのです。
「個の力はその集団によって増大する。役割を見失うな」
「瑣事は目にして黙すが華。真の貢献は実直にこそ在り」
上記が、次の日記帳に記載される父上の至言です。
己が責務を負う時季に暇は要らぬと先に教えて頂きました。
今までは日記帳を頂いてから初めて知るお言葉なのですが、
今は事情が違うと言うことを暗に伝えたかったのでしょう。
お恥ずかしながら、私は何かと物思いに更けて肝心な事を
聞き逃す傾向があるようで。それを察しての配慮なのだろうと
思えば思うほど恐々たる事にございます。
一時、手記に書き纏めた親戚様宛ての言伝を覚えるのに
少し時間を頂戴したいので日記はこの辺りで締めにさせて
頂きます。今年もお世話様でした。
また、この日記を懐かしむ日々を楽しみに――
第四部 三百六十四頁
ハティ 2016/01/10(Sun) 01:41 No.17
十二月三十日
年末年始という言葉がずっと目の前に迫っております。
私達の中でも例外ではなく、親類を
迎える用意の一環として大掛かりな
掃除は欠かせないものでございました。
勿論、掃除は掃除なので全く急ぐ必要は無いはずで、
その為に割く時間も用意しているにもかかわらず
無意識下の強迫に圧されている感覚が
拭えないでいるのは私だけなのでしょうか?
やはり、多感な年頃なのだろうと片付けられがちな
お話に聞こえてしまうのでしょうか?
私としては誰かに聞いてみたいのですが、
こうして日記を書く頃には、尋ねる時期を見失ってしまって
気分が晴れません。どうしたものでしょう?
第四部 三百六十三頁
ハティ 2016/01/10(Sun) 01:40 No.16
十二月二十九日
本日は朝の日差しが清々しい一日でした。
何時ものようにお庭の鳥さんに
ご飯をお持ちした時の事です。
寒空の中固まって暖をとっている
鳥さんの光景に目を引かれまして
何となく手を差し伸べようとしたのですが
その温もりを感じるよりも早く
ご飯を持つ手に一斉に飛びついて
来られて、朝から声を張り上げてしまいました。
誰かの耳に届くのではという有様です。
しかし、幸か不幸か、今の所その件に触れてくる
人達は居ないようなので安堵の至りです。
当時は混乱していたので実感が無かったのですが
鳥さんは暖かかったです。
あと、この手の刺突痕は
何時になったら消えるのでしょうか。
第四部 三百六十ニ頁
ハティ 2016/01/10(Sun) 01:38 No.15
十二月二十八日
今宵も父上からの旅路の話を聞かせてくださいました。
海一つ越えることは幾度耳にしても
孤独が付き纏うものであることがよく分かるものです。
そうした災いを笑って過ごされたのだそうです。
話の節目に不意と、一つ父上に尋ねてみたのです
過酷な海原において貴方は如何に強く有ったのか?
その答えは私達に在るのだと嘗て父上に捧げた
ブローチをお見せになったのです。
私達家族を模した肖像画をグラスで包み、有様を
象ったもの。この手にあるものが活動の源であるのだと。
父上は微笑みかけつつそう、お応え下さいました。
私達在ってこその己である。どこまで遠くへ向かわれようと
互いに身を案ずる事が互いの励みとなり、それが迷える存在への
雄姿となる。誇らしい事この上無き事です。
一番に心躍る至言とは、旅の過酷に向かっての武勇でも、
施しに報いる謝辞に触れることでもございません。
それは、もっと身近の彼の手に握られた一滴なのでございます。
第四部 三百六十一頁
ハティ 2016/01/10(Sun) 01:37 No.14
十二月二十七日
年の瀬に併せて父上が帰るとの報を受けまして、私達は
直ぐに港に集まりました。
思えば、港へと向かう機会もそれほど無いことを父上が
お世話になっている工場の先達様に私を懐かしむお話を受けて
気づいたものです。
今度、差し入れをお持ちしてもっと感謝を伝えねば
なりません。この機会にご報告する事もございましょう。
半年もの刻に積もる話は有り余るものですが、真っ先に
伝えなければならない報せが私にはあり、母上や兄様に
背に押され、真っ先に伝えて頂けるようご配慮頂けたのが
嬉しくて、伝える前から目頭が熱くなるのを覚えております。
この街の一組織として活動することに決まったこと。
無論、私などの者は末端に過ぎぬものですが、それでも
父上は喜んで下さいました。
大いなる海原に身を投じる雄志を眼前に在りながら、
戦ぐ葦にすぎぬこの私に慈悲を賜り下さったのでございます。
父上の温もりを抱かれてこの喜びを忍ぶるなど、罪です。
父上の歓迎に私の歓迎の声が飛ぶことすら、烏滸がましい
念すら覚えども、当時、それを咎める術は無かったのです。
末端を奇貨に御慈愛に浮かれて勤まるものではないのです。
こうして、夢の時間から数刻。己の未熟を恥じる意味でも
ここに、記録を記す事に決めました。
さて――
(ここからは、細かな字で上記の十倍量にも及ぶ精細が
記されている。内容は家族の近況に対しての父への所感。
改めて思い出される思い出に関する感想など、一年通して
一番長い日記は、一頁を綺麗に黒に染めて行ったのであった)